長くECにかかわってきてビジネスの体制を作ってくるなか、多種多様な相談を受けてきました。そんな中で一番多かったのは、
「社内にECがわかる人材がいない、どうしたらいいですか?」です。
なので、越境EC人材ともなると、社内にそうそう適任者がいるはずもありません。
実際、世の中的にも、ECに特化している人材は少なく、どんな規模の会社でも募集してすぐに十分な数の応募が集まるなんてことは滅多にありません。
実務レベルですぐに通用するキルの人もそれほど巡り会えません。よほどラッキーでない限り、少しでもわかる人を見つけ(または、全然できない人でも)、育成するというのが、一番の早道です。
社内異動にしても、外部採用にしても、基本の要件は:
- 自頭がいい。
- ハードワーカー。
- コミュニケーション能力が高い(社内外の調整や連携が最重要です)。
- 自分で手を動かす仕事ができる人(ハンズオンな人)。
*ECに限らず、誰でもどこでも欲しい人材です。
変わった要件では:
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デスクワークができる。
(店頭のみ経験の場合、単純に机に向かって座っていられるようになるのに時間がかかります) - PCが使える。
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システムに抵抗がない。
(管理画面というだけで、訳が分からなくなる人が多い)です。
内部異動だと:
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既存ビジネス(商品買い付け、開発、販売、物流など既存ビジネスのメインストリーム)で実績を持っている人。
⇒EC、越境ECなど「新しいことをやる!」といっても、必ず既存業務にかかわり、負荷をかけてしまいます。その際に、既存事業で実績のある人が言うことなら、皆さん比較的聞いてくれるからです。また、既存事業、商品の知識はECでも必須です。
できれば:
- EXCELを使い慣れている人。
- ECで買い物をよくする人。
*逆にNGなのが、業務ではなく、趣味的にECやネットに詳しい人、ECではないですが、システムやネットの隣接業務にかかわっている人です。理想と現実、自社のステージや直面する問題などを解決していく際には、逆に邪魔になるケースのほうが多いです。
外部採用だと:
- EC経験者。ただし、EC運用代行業者に丸投げしていなかった人。(自分でやれません。)
- マーケットプレイスだけでなく、自社ECの経験のある人です。
(マーケットプレイスと自社ECの共通項はありますが、売上を作るときのルールが大きく違います。)
*あまり大きい会社の人でないほうが良いかもしれません。
募集の役割にもよりますが、リーダー、マネージャークラスだと:
- 自社ECで複数の役割のリーダー、マネージャーまたはそれに準じる経験者。
- 規模の関係では、できれば、(今の規模ではなく)自社でやろうと思っているEC売上規模に近い経験者。
(大きすぎても、小さすぎても、解決する問題の種類が違うためむつかしいです。) - できれば、ECサイト、ECビジネスの立ち上げにかかわったことのある人
(責任者でなくても)。
越境ECの観点では:
- 海外に抵抗のない人。
- 英語で最低限の読み書きができる人。(対象が英語圏でなくても必要なことが多い。)
- できれば、対象国の言語で最低限の読み書きができる人。
- わざわざ、外部採用であるのなら、対象国の文化、ECが少しでもわかる人。といった感じでしょう。
まとめ
むかし、貿易実務をやっていた立場からすると、越境ECといっても、個人輸入のレベルプラスアルファくらいなので、継続的に運用していくという行為自体は、比較的難しくはないのですが、海外が絡むとか、言語が絡むと先入観的に考えてしまう人が多いのです。
国内の場合でも、システム、ネットが絡むと億劫に感じている人が多いのが実情です。
なので、「海外、言語」×「システム、ネット」のダブルで考えると、非常に消極的に考えられてしまうということがままあります。
プロジェクトを主体する皆さんにおいては、採用も育成も覚悟してかかったほうが良いでしょう。
採用は、なかなか、決まらないので、とにかく続けて、採用と並行して、内部育成をすることをおすすめします。
また、育成ですが、外部の経験者に教わる場合、または、運用代行、制作会社、代理店などに業務依頼する際に、その業務に社員を入り込ませて手を動かして一緒に作業することで学ぶのが一番早いと考えています。
スムーズな流れとしては、業務委託→採用育成→内製化が良いと思います。
私は過去の様々な組織での経験から、「海外、言語」×「システム、ネット」よりも、むしろMD、商品選定、値付け、顧客提案、販売などの基本的なスキルのほうがよっぽど習得することに時間がかかると思っています。
実際に、中途半端にWebのコンサルをかじっていますとかよりも、よほどECで成果を出すためには大事で、それらがある前提での越境EC成功への基盤になるのです。なので、これから越境ECを始められる方も、これまでに販売やMDをやっていた人は自信をもって業務にあたっていいと思うのです。是非とも現場で生かした経験を最大限に発揮して行ってください。
次回は人材の育成についてより詳しく書いていきます。