最近のシングルタスク礼賛界隈に違和感を感じる。
マルチタスクをすると脳みそが劣化すると言った話に始まり、そもそもの仕事自体、業務内容、オペレーション、ひいてはそれを推進する会社の考え方が悪いくらいの言われようだ。
ただ、それはちょっと時代に合わなくなっているのでは?と感じる。
業務内容の違いはあれど、AI時代において、マルチタスクしないという合理性は、ほぼ皆無に等しくなった。
私はマルチタスカーだ。しかしながら、おおよそSNSで言われているようなシングルタスクの効率性みたいなものに対して異論を唱えようという話ではない。
一つのことだけに集中した方が仕事は速い。
私自身、一つの仕事だけをやっていいのであれば、その方が圧倒的に速いと思う。
しかし残念ながら、実際の仕事はそうならない。
顧客に確認を出せば返事を待つ。スタッフに仕事を依頼すれば、その仕事が終わるまで待つ。その返答が突然返ってくることもあれば、逆にすぐ返ってくると思っていたものが翌日になることもある。
仕事を一つずつ完全に終わらせてから次へ進もうとすると、現実にはかなりの時間を待って過ごすことになる。
だから私は、仕事全体ではかなりマルチタスクで動いている。
というか部門長以上のマネジメントレベルになって、マルチタスクでない人などいるのだろうか?
序盤から本題と脱線してしまったが、今回は、シングルタスクvsマルチタスクというような内容ではなく、どうやったらマルチタスクを上手くやりくりできるようになるのか、ということを私自身の学生時代に働いていた、バーやキッチンの経験から整理してコツを伝授していきたい。
ただし、記事を校了後に読み返してみたが、これを読むと、マルチタスカーになれる!というよりは、どういう階段を登ればマルチタスカーとして成立するかを書いているにすぎないと気付いた。
つまり成れるかどうかは皆さん次第だが、それでも階段がわかれば自分がどこまでは出来ていて、先にどんなステップが待っているのか知ることにはなるので、修正せずにこのまま公開まで持っていった。
私が考える、マルチタスクを成立させる7つのこと
先に結論を書いてしまうと、私が考えるポイントは次の7つになる。
マルチタスクを成立させる7つのこと
- 速く動くより、無駄がない
- ミスと手戻りを減らす
- コミュニケーションを型化する
- 自分でボールを止めない
- 一手二手先を読む
- タスクの主導権を自分が持つ
- 全体を見て、「今やる一つ」を決める
最初のうちは、自分の仕事をうまく処理するための話が中心になる。
そこから、複数の仕事を同時に進める話になり、さらに周囲の人の仕事まで含めて全体を見る話になっていく。
7つ目まで行くと、もはや単なるマルチタスク能力ではなく、高度なマネジメント能力になる。
バーやキッチンのような、一定単純作業の繰り返しに見えるような業務と、それこそ現在の私が行っている業務は全くもって同じではないが、根っこの部分では同じように感じている。
なので、あまりその辺は批判的に解釈せず、読み進めてほしい。
この7つのコツをレベル分けするとしたら、
| Level | コツ |
|---|---|
| Level 1 | 速く動くより、無駄がない ミスと手戻りを減らす |
| Level 2 | コミュニケーションを型化する 自分でボールを止めない |
| Level 3 | 一手二手先を読む タスクの主導権を自分が持つ |
| Level 4 | 全体を見て、「自分にしか出来ないこと」を決める |
こんな感じだと思う。
Level 3のことを仮に皆さんが人から指摘されたとしても、Level 1、2が出来なければ当然にLevel 3は出来ないことが多い。
まずは自分が現在の業務でどこまで出来ているかチェックしてみてくれ。
それでは具体的に1つ1つの項目について見ていこう。
仕事が速い人は、速く動いていない
バーやキッチンで働いていると、仕事が速い人と遅い人の差がかなりはっきり見える。
仕事が速い人は、速く動いているのではなく、一定のスピードで、ずっと動いている、ということだ。
逆に仕事が遅い人は、急に速く動いたかと思えば止まり、何かを探し、迷い、やり直し、また急いでいる。
つまり、仕事の速さを決めているのは、瞬間的なスピードではない。
無駄な時間がどれだけ少ないか。
こちらの方が圧倒的に大きい。
何を作るか迷わない。道具を探さない。次の作業を考えるために止まらない。手戻りもしない。
だから一定のテンポで仕事が流れていく。
下道を一生懸命速く走り、信号で止まり、また速く走り、信号で止まる。これにも似ている。
仕事が早い人は、高速道路で一定の速度で、少ないパワーで止まらずに走っている。
結果、同じ距離を走るなら燃費的にも高速の方が良い。
概念はわかるけど、どうやってやるんだよ、という声が聞こえてきそうだが、これはある程度経験で解決できる、と思っている。
そして速く動こうとするマインド自体は全く悪くない。
しかし、速く動こう、というか考えずにとりあえず動いてしまう類の癖がある人は、飲食店だと、よく皿やグラスを割ったり、持てない量の料理を同時に運ぼうとして落としたりする。
こういったミスが多い人は自分の行動を見直して、冷静に考えて物事を進めるという方向に少し意識的に思考を強制した方が、改善が早い。
後は量をこなしてくれ、としか言えない。
コミュニケーションコストを最小化する
Level 1を要約するなら、無駄を無くそう、という言葉に集約される。ただし、本人の無駄をなくしましょうね、というのにとどまる。
Level 2では、そこに多少のチームワーキング要素が入ってくる。
チームで物事を進める上で最も無駄になりがちなもの、それがコミュニケーションコストだ。
大抵の飲食店では、コミュニケーションは型化されている。
お客様が来店された、注文が入った、退店後のテーブルの再セッティング、トイレにいく、などなど。
これらを毎回考えて説明していたら、コミュニケーションだけで店が止まってしまう。
そして働いているのは多くの場合アルバイトだ。
だから自然と型がある。
品質を一定にすることも重要だが、それは認知負荷の圧倒的な削減による作業効率最大化に最も寄与する。
ある程度の経験を積めば、一緒に働く相手が次に何をやるのかまで予測できるようになる。
今の仕事でも、これはかなり重要だ。
依頼のたびに前提から長く説明する。相談のたびに状況を整理し直す。問題が起きるたびに、何を確認してほしいのか分からない。
会議についても、アジェンダや報告する内容などは、当然に型でやるべきだ。
報告を受ける側としては、聞きたいことの核心は決まっている。
報告内容などはむしろ毎回同じ型で話してもらえないと頭に入ってこない。
報告者の説明能力によって何が起きているのか把握できないという状態は、仕事ができない人に仕事の主導権を握らせていることと同義になり、組織として問題だ。
だから、依頼の仕方、確認の仕方、問題報告の仕方、期限の伝え方などは、ある程度型になっているべきだ、というよりも型になっていなければ多くの場合に仕事が成り立たないだろう。
自分がやらないタスクで、ボールを止めない
Level 2の後半では、優先順位付けの話になる。
優先順位付けは以前のアイゼンハワーマトリクスの記事でも軽く触れたが、要は重要度と緊急度の話になりがちだが、多くのケースで、何をもって重要で、何をもって緊急かはそれぞれの置かれている立場や状況に依存しがちだ。なのであまり詳しく書かれない。
この段階ではある程度明確に優先順位付けができる必要があり、一番のポイントは自分のところで仕事を止めないことだ。
とにかく自分が不必要にボールを持つことで、全体のボトルネックにならないように動く必要がある。
なので自分にボールが来たら1秒でも早くリリースする癖を身につける必要がある。
その中の初歩的にして最たる例が、自分が依頼を受けたが、自分が処理しない類の仕事の情報共有や依頼をいつまでも自分が持ってしまっているという例だ。
ホールのスタッフは料理を作らない。
なので、オーダーを受けた本人がそれをキッチンに伝えなければ作り始めることは出来ない。
自分が料理を作るなら多少止まっても良いかもしれないが、そうでないケースの場合、情報の伝達は基本的に最優先で行う必要がある。
そしてチームで動く前提がある以上、コミュニケーションの型化も避けては通れない。
ここで1つアドバイスするとしたら、電話や対面の双方向コミュニケーションをもっと使ってください、ということだ。
ボールを保持しがちな人の特徴として、結構驚いたことだが、人に依頼するための文章をチャットで書くのに30分も1時間も考えて文章を書き直しているということだ。
直接話せば10秒で終わることを、相手の時間を奪っちゃ悪いから、ということで延々とメールやチャットの文章を書いている。そして、悲しいかなその文章を受け取った本人は、その人が何を言いたいのかよくわからない。
失礼になるかもしれないし、言葉遣いを間違うかもしれないが、これはまさに優先順位を間違っているか、そもそも優先順位という概念が頭にない人の発想だ。
もっと自分を出して、失礼な表現になったとしても真に受けないから、端的に依頼したい内容を伝えろ、と励ましたい。もちろん失礼な表現なら指摘するが。
とにかく自分がやらないと分かっているタスクについて、ボールを持っている時間を最小にする癖を身につけよう。
経験が増えるほど、一手二手先が見える
Level 3の段階まで来ている人は、自分だけでなく、まわりのスピードを上げることができる。
バーやキッチンで慣れている人は、一手二手先を見て動いている。
何かを火にかけたら、その数分後に何が必要になるか分かっている。
隣で働いている人が次に何を必要とするかも見えている。
だから自分の作業をしながら常にまわりの状況が頭に入っている。
なので、何かをトリガーに、ここでボトルネックが発生するとか、オペレーションのスピードが遅くなるということも予見できる。
だから周りもテンパらなくなる。
そして、一手二手先を読めるようになると、結果として余裕が生まれる。
週末のピークの時間帯にビールのガスが切れるということも事前に潰しておける。
グラスのバッシングや洗うのが追いついていないから、グラスが温かいままだったりするのも先んじて手を打てる。
製氷機の氷がちゃんとした形で出てこなくなることを防止するためにフィルターの汚れを確認し、必要に応じて掃除する。
こういった先手の積み重ねが、生産性とキャパシティの向上に繋がる。単にDXする、AIを入れるということでは全くない。
自分が仕事の主導権を持つ
大きい店で役割分担が細かく分かれているケースではここまでの話は対処しやすい。
しかし小さい組織では、自分が複数の異なる領域をカバーする必要が出てくる。
例えば、料理をしながら接客もするような場合だ。
料理のちょうど重要な工程でお客さんに呼ばれることもあるし、複数の人から同時に声をかけられることもある。
ここで、呼ばれるたびにすべてを中断していたら仕事は崩れる。
しかしながら、ちょっと待ってください、と言えばお客さんが一定の不快さを感じる。
受け身にならない。というのも難しい話だ。
ここで、1つ現実的な話になるが、マルチタスクをこなすためには主導権を持つことが重要になるが、主導権をどうやったら持てるかの方法論は、自分または自分の所属する組織が他者から敬われる存在になる、そして一緒に仕事をする相手、お客さんを選ぶこと以外に方法論がない、ということだ。
複数の仕事を抱えているからこそ、自分が貢献できるポーションが大きく、であるがゆえに、どの仕事を、いつ処理するかの主導権は自分が持つ必要がある。
主導権のない受け身のマルチタスクは、単なる割り込みの連続になる。
上下関係、クライアントなど利害関係がある環境で、アシスタントの人間が主導権を持つというのは難しいことだろう。
しかし、やらなければいけない。
周囲からのリスペクトを得られるように日頃から研鑽が必要になる。
これにコツはないが、自分が動くということではなく、相手を動かすコツを身につける以外に対処方法はない。
逆にこれが出来るから高い生産性を実現できるという話になり、出来てないなと思うならそれを身につけることであなたの年収は爆上がりするだろう。
1つ注意点がある。
世間では、よくこの主導権の話とセットで優先順位の話が出てきて、やらないことを決めるんだと単純化されることがある。
主導権を持って進めるということと、やらないことを決めるのは同じことでは全くない。
飲食店で、オーダーが大量にきても、やらないことは決められない。最終的には全部やる必要がある。
接客が忙しいから洗い物は後回し、までは出来ても、洗い物をやらないというわけにはいかない。
店の掃除もそうだ。優先順位は下げることが出来ても、やらなければ長期的には食中毒リスクなどで店が終わる。
優先順位を付け、主導権を持つ。そして、最後までやり切る。それが責任へとつながる。
ここまでをもってして初めて、マネージャーとして仕事を安心して任せられる人財と呼ばれるようになるだろう。
最後は、「自分にしか出来ないこと」を選ぶ仕事になる
最後のLevel 4は、自分にしか出来ない仕事にフォーカスする、という話だ。
自分の仕事を止めない、一手先を読む、割り込みをコントロールする。
ここまでは、自分の仕事をうまく処理する技術と言える。
しかし、さらに仕事が上手い人は、自分の仕事だけを見ていない。
店全体を見るようになる。
マルチタスクに関してはここまでのLevel 3で完成する。
しかしながらその先にあるのはやはり組織の価値向上となり、それには自分にしか出来ないことにフォーカスして仕事を産み出すというシングルタスクに戻ってくる。
結局リーダーの仕事とは、読んで字の如くリードしていくことになり、仕事を産み出すことがそれに当たる。
その段階まで来ることが出来れば本当の意味で仕事を自分ごと化する日が来る。
つらつらと書いてきたが、現代の仕事においてマルチタスクは避けて通れない。
そしてそれを極めた先にはリーダーとして組織を活用して新たな価値創造するというエキサイティングなお仕事が待っている。
是非精進していただきたい。
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