弊社では国内唯一のShopifyを活用したモール型ECの構築アプリを提供しており、これまで複数のクライアント様に提供してきました。その過程で、自社アプリのみならず、様々な代替手段についても研究してきたので、その一環としてShopifyが2025年に提供を開始したこのShopify Collectiveという機能でモール型ECのような運用が可能なのかどうかを調査・検証してみました。
結論としては、Shopify Collectiveで楽天やAmazon、また弊社でサポートしている一休お取り寄せなどのような、いわゆるモール型ECの運用は厳しいが、限定的なやり方やPoCとしては活用する価値がある機能だなと感じました。
本記事では、その理由を実際の検証結果をもとにモール型ECの構築を検討されている事業者またはそれを支援するコンサル系企業のビジネスサイドの方向けに解説しますが、個別の機能1つ1つを詳細に説明してしまうと非常に長い記事となってしまうため、機能の詳細については公式ドキュメントの参照をお願いしたいと思います。悪しからずご了承ください。
1. Shopify Collectiveとは?
Shopify Collectiveは、Shopifyのストア同士を連携し、他社や他ブランドの商品を自社ストアで販売できるShopify公式のドロップシッピングを行うための機能で、2025年より日本のストアでも利用できるようになりました。
Shopify Collectiveには、商品を提供する「サプライヤー」側と、商品を販売する「小売業者」側が存在し、サプライヤー側は卸売として提供する商品及び取引条件などを設定、小売側は自社で仕入れたい商品をShopify Collectiveを通して探し、仕入れ交渉を行う、こういった一連の行為がShopify Collectiveの中で完結できます。
商品の情報に関してはShopify同士であるため、仕入れが成立した段階で自動的に小売側の商品管理に連携され、在庫情報も同期されます。それをそのまま自社のコレクションと紐付ければ、販売することができるため、自社の現在のMDから更に品揃えを良くしたいなどのニーズに応えるための機能となっています。元々はクリエイターエコノミーが発展していく中で、その流れを支援する立ち位置であるShopifyがリリースした機能であると認識していましたが、一般的な企業間での取引でも活用できるようにされたんだな、という印象でした。
余談はさておき、Shopify同士でドロップシッピングをするための機能であるため、小売側がモールのフロントとして立ち、Shopify Collectiveを通じて複数の店子と接続し、その商品をプラットフォーマーとして販売するという形態が取れるのではないか?というのが本調査のスタートになり、そういうことが出来ませんかね?という相談も何回かお受けしました。
2. 出来そうな気がするのになぜ厳しくて限定的な運用に止まるという話なのか?
その理由は、
- 店子として仮想出店(出品)するストアは必ずアクティブなShopifyが必要になる。
- 注文データ・配送・送料の仕組みに関する制約。
となります。それぞれ掘り下げます。
2-1. Shopifyのストア必須
まず、ある程度の規模のモール型ECを構築運用しようとした場合、出店数または出品数が重要になってきます。出店する企業が全てShopifyのアカウントを持たなければならないというハードルをクリア出来るようであればそれは問題ないとなりますが、それらの企業がShopifyもっと言えば通販業務に慣れていて、Shopifyの管理画面を自律的に触れるという前提がなければ店子側が運用できないとなってしまいます。モール管理者としては、店子が一生懸命商品を出してくれなければモールの魅力が上がらないため、店子さんのShopify自体のサポートをShopifyヘルプセンターに代わって行わなければならなくなります。Shopifyの機能や管理画面のUI/UXはモール管理者のコントロール化に無いので、ここがネックとなり得るポイントとなります。
逆に、モール型と言っても同じグループ内の特定の企業やブランドが1つのフロントで上手く運用を回したいといったプロ同士の小規模なモール運営であれば、店子側もShopifyのアプリエコシステムを始めとした様々な恩恵に預かれるため、むしろ向いていると言えます。
2-2. バックエンドまわりの制約
バックエンドまわりの制約のうち、モール型運用をする際に自社の1か所の倉庫にサプライヤーの商品を集めて、モール運営者がまとめて梱包して配送する、ということをやる場合Shopify Collectiveだとほぼ実現が出来ません。また、購入者に対して設定する送料とそれに紐づく利益構造の最適化が難しいというのが結論となりますが、結論だけ言われても腹落ちしにくい部分だと思いますので、Shopify Collective活用時のバックエンドまわりの仕様について説明します。
チェックアウトの仕様
まず自社含めた異なるサプライヤーの商品を同時にカートに入れて1回で決済することは可能です。ふるさと納税のサイトのようなイメージです。
送料
ここの説明はちょっと長くなります。前提として配送はサプライヤーが産直形式で購入者に送りますが、購入時に表示される送料は、モール側で設定します。その際、送料を注文単位で計算するかサプライヤーごとに計算するかの設定が可能です。
ケース1)注文単位で送料を計算する場合
商品A(サプライヤーA/商品価格4,000円)と商品B(サプライヤーB/商品価格7,000円)を同時に購入した場合、商品代金の合計は11,000円になります。仮に送料一律800円と設定している場合、購入者が支払う金額は11,800円になります。
注文単位で送料を計算する設定では、サプライヤーが複数に分かれていても、小売業者が設定した送料ルールが注文全体に適用されるので、通常のEC運用と同じになります。たとえば、「10,000円以上送料無料」と設定している場合、注文全体の商品代金が11,000円となるため、購入者に表示される送料は無料になります。
ケース2)サプライヤーごとに送料を計算する場合
商品A(サプライヤーA/商品価格4,000円/送料700円)と、商品B(サプライヤーB/商品価格7,000円/送料800円)を購入者が同時に購入した場合、商品代金の合計は11,000円になりますが、送料は700円+800円の1,500円となり、購入者が支払う金額は12,500円となります。
また、サプライヤーごとに送料を計算する設定では、送料や送料無料のしきい値もサプライヤーごとに判定されます。そのため、小売業者側で「10,000円以上で送料無料」と設定していたとしても、注文全体の合計金額ではなく、各サプライヤー単位で判定されるため、送料無料となりません。
ここで、購入者からすると混乱が起きます。ECで物を購入するお客様の中には一定数注意書きを読まない方もいらっしゃいますので、ここで何で送料がこうなっているのか?バグか?のような問い合わせがきてしまう事が容易に想像できます。
とはいえ、Shopify Collectiveで商品を仕入れる際に、送料はサプライヤーが負担しモール側に請求しないという取り決めが無い限りは、サプライヤーからモール側に送料の請求が発生するため、ケース1を選ぶ場合は送料負担による利益の減少を折り込んでおく必要があり、その辺りが少々めんどくさいところになると思われます。
注文データ
モール側には当然に注文のフルデータが入ってきますが、サプライヤー側には自分の商品に関する注文情報及び配送先情報が入ってきます。該当の注文はShopify Collectiveを経由した物だと販売チャネルまたはオートタグなどで識別することは”Shopifyの管理画面上では可能”です。しかしながら、送付先の住所は購入者(エンドユーザー)となっているため、モール管理者の倉庫に送らなければならないという認識をしてもらえるかが微妙なところです。
ちなみにモールといえばメールアドレスが店子と連携されるのかどうかという話がありますが、これは連携されません。
バックエンドまわりの制約がもたらす課題まとめ
サプライヤー個別に配送先を固定できるような追加機能アップデートを待とう
まず産直型のECとして運用する場合、エンドユーザーに送料の仕組みを理解してもらうのが大きな課題となります。同時に、そこをシンプル化した場合は自社の利益をそれなりに圧迫することになり、ドロップシッピングという取引形態上期待する粗利率は高くない事が想定されるため、自社の利益が大幅に圧縮され、ビジネスモデル自体が成立しない可能性があります。
かといって、注文があった際に自社の倉庫に商品を集約し、まとめて発送する形式を取るにしても注文データがそれに最適化されているわけでは無いため、オペレーションがスムーズに回らない可能性が高く、それであれば普通にShopify Collectiveを使わずに運用を行い、仕入れやその支払いの管理は別の場所で行った方がシンプルです。
今後の機能アップデートで、Shopify Collectiveにおける小売側が、サプライヤー個別に注文時の配送場所を固定で指定できるなどの機能が追加されない限りはこの制約によって産直型も一括配送型もそのハイブリッドもオペレーションが綺麗に回る状態では無いというのが現状です。
3. Shopify Collectiveでモールチックな運営をするなら
ここまで解説してきたとおり、Shopify Collectiveでモール運営を行う場合、活用できるケースはかなり限定的です。少なくとも、楽天市場やAmazonのように、不特定多数の出店者を集めて運営するモール型ECには向いていません。
弊社が思う、モールとまでは言わないまでも実用に乗せうるケースとしては、
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モール型EC構築に何千万も投資できないという段階で、グループ企業や系列ブランドなど関係性のある事業者間のみで統合サイトを作るケース。
こういったケースでは、各社で既にECを独立して運用していることが多いんですが、その際にShopifyだけでなく、別のカートシステムも混在しているのが一般的だったりします。それら異なるECカートを全てShopifyにリプレイスしてしまうことは非現実的だとした際に、その利用中のECカートとOMSなどを活用して最安プランのShopifyとデータのみ連携してしまうことで、統合サイトを比較的安価に実現することが可能です。
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モールではないが、一部の受注生産、予約商品の受発注業務をサプライヤー側に管理画面を渡して自動化したい
これはどちらにしても同時注文を受け付けないとか、元々メーカーから直送されるなどの仕組みの場合に有効です。もちろんサプライヤー側がShopifyを触ることへの同意が必要となり、多少のサポートが発生しますが、こういったニーズのある小売業者には活用の価値があります。
まとめ
Shopify Collectiveは、Shopifyストア同士で商品や在庫を連携し販売する機能です。
実際に検証した結果、複数ブランドの商品を1つのストアで販売することはできますが、モール運営やモール構築を目的とした仕組みでの活用は、ビジネス面での仕組み構築が難所で、そこを突破できるケースのみで実現可能だなという印象です。もちろん、今後のアップデートでより活用の幅が広がる可能性はありますが、Shopify Collectiveの元々のコンセプトからは外れているため、どんなもんかといったところです。
最後にちょっとコマーシャルとなりますが、ここまでに述べた全ての問題を解決できるマルチサプライヤーアプリというものを弊社は提供しておりますので、Shopifyの基盤を活用してモール型ECの運用がどうしてもしたいんだ、という方は是非お問い合わせください。5年間のモール型ECの構築から運用の支援の知見から様々なケース、アーキテクチャーのサポートが可能となっております。
ちょっと古いですが、モール型ECサイトの構築と運用については、一休.comお取り寄せの事例を交えて解説したセミナーアーカイブも公開しておりますので弊社システムの概要を確認されたい方は是非ご視聴ください。
https://hiyaku-inc.com/blogs/archive/multisuppliers-seminar-archive
