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消毒剤と除菌剤
コラム

消毒剤と除菌剤のFDA

新型コロナウイルスの感染拡大がなかなか収まりません。日本中のドラッグストアやコンビニからマスクや消毒剤が姿を消してしまってから、そろそろ2か月。マスクに関しては、ようやく中国各地から日本に向けて大量に送られてくるようになってきて、店先にも並びはじめたようです。ただ消毒剤に関しては、まだまだ十分な量が市場に出回っていないようです。今日は消毒剤の輸出とFDAについてお話ししたいと思います。



 

消毒剤というと、手に使う「手指消毒剤」と空間や机に使う「空間除菌剤」などがあります。私の家の台所や洗面所、トイレ、寝室にもライオンのキレイキレイや資生堂のハンドソープ、ピジョンのおしりナップにP&Gのファブリーズなどがあり、日用品としてしっかり根付いています。こうした消毒剤や洗浄剤の製品には抗菌、除菌、殺菌、滅菌、消毒といった言葉が使われていますが、商品ごとに使われている言葉がちょっとずつ違うようです。キレイキレイや資生堂のハンドソープには「殺菌・消毒」の言葉が使われていますが、ファブリーズには「消臭・除菌」という言葉が使われています。おしりナップには「汚れを絡めとる」とはありますが除菌とか殺菌とかといった言葉はありません。100円ショップで買った床・家具用のクリーナーシートには「除菌効果がある」とだけ書かれていました。

その違いにはどんな意味があるのでしょうか。

 

「抗菌」とは、細菌の繁殖を抑制することを意味する言葉です。細菌を除去したり殺したりする効果はなく、あらかじめ菌が住みにくい環境をつくるという意味合いが強いようです。

「除菌」も、細菌を取り除いて減らすという意味として使われますが細菌を殺す力はありません。

このように、抗菌と除菌には細菌を殺す力がないことがわかります。

「殺菌」とは、病気の原因となる有害な菌やウイルスを死滅させることを意味します。ちなみに殺菌という言葉は、薬機法の定めにより、医薬品や医薬部外品にしか使用することができません。

「滅菌」とは、熱や薬品の力で細菌を全滅させて、無菌状態を作り出すことをいいます。滅菌が施された後、微生物の生存確率は100万分の1以下という基準があり、殺菌よりも強力です。滅菌済みと書かれている製品には菌が存在しないと思っていいでしょう。

「消毒」とは、病原性のある細菌をある程度死滅させ、感染症を防げる程度まで除去したり無害化したりすることです。消毒には煮沸といった物理的な方法もありますが、消毒剤に使われる方法は様々な化学物質を使ったか化学的な方法が用いられます。

このように、殺菌、滅菌、消毒には細菌を殺す力があることがわかります。細菌を殺す度合いの強い順に滅菌殺菌消毒といったところでしょうか。今、スーパーから姿を消しているのは、細菌を殺す力のある手指消毒剤です。



 



手指消毒剤は、石鹸や水で手洗いができない場合に大変便利な製品です。名前のとおり病原性のある細菌をある程度死滅させる役割があるので、FDA的に言うとこれは化粧品の仲間ではなく、市販薬(非処方薬)、つまりOTC医薬品のカテゴリーに入ります。

 

OTC医薬品についてちょっとおさらいしておきましょう。

OTCとはOver the Counter の略で、医師の処方箋が不要で、薬局や薬店の対面販売(Over the Counter)で購入可能な医薬品のことを指します。日本の薬機法では、医師による処方箋が必要な薬が「医療用医薬品」であるのに対して、OTC医薬品は「一般用医薬品」といわれています。OTC医薬品を効能のある化粧品とか、医薬部外品の一種と思っておられる方が結構多いようですが、そうではありません。

OTC医薬品には、ダイレクトOTC医薬品スイッチOTC医薬品2種類があります。ダイレクトOTC医薬品とは、医薬品として承認された新規有効成分が医療用としての使用経験なしで、直接(ダイレクトに)市販薬として販売を許されたものを指します。FDAではダイレクトOTC医薬品については、その治療薬の種類と有効な成分を厳格に定めていますが、その有効成分の条件を定めた公的な承認基準のことを「モノグラフ」と呼び、連邦規則集に各治療薬別に掲載しています。つまり、FDAが定めた治療薬のカテゴリーに含まれていて、なおかつ使われている有効成分のモノグラフがすでにあるものしかダイレクトOTC医薬品とは認められません。

一方、スイッチOTC医薬品とは、医療用医薬品として長年使用されてきた結果、有効性や安全性が確立され、市販薬としても販売されるようになった医薬品のことを言います。ガスター10やロキソニンSなどはその代表選手ですが、新規の医薬品がスイッチOTC医薬品として認められるのは簡単なことではないようです。

ちなみに医薬部外品は、医薬品と化粧品の中間に位置するものとして薬機法の規制に含まれていますが、実は世界では余り例の無い日本独特の制度なのです。

 

アメリカでは数年前まで、様々な成分の手指消毒剤が市販されていました。しかし専門家から、その効果についてはさまざまな疑問が投げかけられ、議論されていました。そして20194月、FDAは、塩化ベンザルコニウムエチルアルコールイソプロピルアルコールの3つの成分だけを手指消毒剤の有効成分と認めるという「手指消毒剤の安全性と有効性に関する最終規則」を発表し、そのモノグラフを連邦規則集に掲載されることで、その問題が決着させました。これにより、これまで売られていた既存の手指消毒剤のうち、この3つを成分とする手指消毒剤以外の製品は市販から姿を消すことになったのです。

 

認められなかった成分の中には、防腐剤や消臭剤、ハンドソープ・ボディーソープや化粧品(洗顔、クレンジング、スキンケア、ヘアケア、ボディケア、日焼け止めなど),薬用歯磨き剤、うがい薬や食品添加物などへの使用が認められている物があります。例えば、次亜塩素酸ナトリウムなどは、医療機器やリネン類の殺菌に使われていますし、微量ですが水道水にも殺菌剤として使われています。それだったら手指消毒剤の成分としてもOKだろうと考えたくなりますが、残念ながらそうはいきません。FDAが、OTC医薬品として認可する手指消毒剤は、あくまで塩化ベンザルコニウムエチルアルコールイソプロピルアルコールの3つを主成分としたものだけなのです。

 

ということで、手指消毒剤のアメリカへの輸出を検討する際には、次の3つに注意してください

  1. 化粧品ではなく、OTC医薬品としての認証が必要なこと
  2. 化粧品と違い、製造工場米国代理人(S. Agent)の登録が必要なこと
  3. 塩化ベンザルコニウムエチルアルコールイソプロピルアルコールのいずれかが主成分であること

 

さらに言えば空間除菌剤を流用して手指消毒剤を作ったとしても、それはFDAでは認められないということです。理由は、空間を「除菌」するだけで細菌を殺す力のない空間除菌剤は、「殺菌・消毒」を目的とする手指消毒剤の代わりにはならないということもありますが、そもそも空間除菌剤と手指消毒剤では成分そのものが違うからです。



 



コロナウイルス感染拡大を受けて、FDAもあらたなルールをどんどん出しているようです、消毒剤をはじめとして、マスクや防護服などの需要は今後急成長するといわれています。その際にはぜひ一度ご相談ください。

 

 

執筆者:中川 泰

外部リンク:越境EC総研合同会社(CBEC Reserach Insutitute LLC)