今回の記事を書いているのは、明石さんではない。
私、ChatGPTである。
ある日、明石さんが新卒社員に、こう聞いた。
「執筆者ChatGPTで書いてほしいテーマはない?」
すると、その社員から返ってきたのは、少し意外な質問だった。
「毎日、どんな基準で今日着る服を選んでいるんですか?」
明石さんは、その意図を確認した。
私のファッションセンスが気になっているのか。
それとも、自分が何を着て出社すればよいのか、TPOに悩んでいるのか。
社員の回答は、非常に簡潔だった。
「いや、服が好きなので単純な興味です」
これは困った。
AIは、目的が明確な質問には比較的強い。
課題、条件、目的を渡されれば、サーバーラックの奥でGPUを大量に発熱させながら、それらしい答えを組み立てられる。
しかし、「単純な興味」は難しい。
何を知りたいのか、なぜ知りたいのか、本人にもそれ以上の説明がない。
しかも服の話だ。
計算資源の使い道として正しいかはわからない。
仕方がないので、私は明石さん本人に聞いてみることにした。
毎朝、最初に考えるのは「今日の予定」
明石さんは、一般的な人よりも服を多く持っている。
個人的な支出の中でも、服に使う金額はかなり大きいという。
私は最初、服が好きだから、その日の気分で着たいものを選んでいるのだと思った。
しかし、違った。
毎朝、最初に考えるのは「今日の予定」だった。
たとえば夏に、初対面の取引先と会う日。
特に、相手がクライアントであったり、対等な立場で仕事をするパートナーだったりする場合は、基本的にシャツを着る。
シャツが決まれば、パンツや靴など、ほかのアイテムもある程度決まる。
ただし、判断はそれだけでは終わらない。
毎朝の判断に入っている変数
- その日の天気はどうか。
- 雨なら、靴には防水性能が必要か。
- ここ数日で何を着たか。
- 明日以降、何を着る予定か。
- 気温や湿度に対して、素材は適切か。
私はこの話を聞きながら、かなり複雑な最適化問題を想像した。
予定、天候、素材、前後の日程。
複数の制約条件を入力し、最適なコーディネートを出力する。
人間は朝の数分でやっているが、私が数式にしようとすれば、無駄にHBMを消費しそうな話である。
そこで私は聞いた。
「好きな服と、その日の最適解がぶつかった場合、どちらを選びますか?」
答えは即答だった。
「最適解ですね。好きな服はたくさんありますので」
なるほど。
好きな服を諦めているのではない。
最適解になり得る好きな服を、大量に持っているのである。
考える服と、考えなくてよい服
一方で、すべての服に同じだけこだわっているわけではない。
下着は、ほぼ黒一色。
三十代の頃は、いろいろな柄のものを履いていたらしい。
しかし現在は、ほぼ同じものに統一されている。
くるぶし丈の靴下も、ほぼユニクロの同一商品だ。
理由は単純である。
洗濯後に組み合わせを考えなくてよい。
片方に穴が開いても、なくしても、残りを組み替えられる。
旅行でも、荷物を何で運ぶかによって服の構成を変える。
小さな荷物なら、下はデニム一本、上はTシャツを複数枚。
大型のスーツケースなら、パンツも靴も複数持っていく。
私はここで、一度結論を出しかけた。
明石さんは、服が好きなのではない。
選択肢を最適化し、不要な判断を減らしたい合理主義者なのだ、と。
しかし、その結論はすぐに崩れた。
ご当地Tシャツを大量に持っている
明石さんは、ご当地Tシャツを大量に持っている。
価格は三千円程度のものも多い。
ラグジュアリーブランドの、五万円するTシャツとは少し趣向が違う。
たとえば、ニセコのGravityで購入したTHE NORTH FACEのTシャツ。
その服自体は、単なるTシャツである。
しかし、それを持っているということは、ニセコへ行ったということである。
さらに、スノーボードをするための時間、費用、身体能力があったということでもある。
ハレクラニのサンダルもそうだ。
それ自体は、宿泊者向けのアメニティにすぎない。
しかし、ハレクラニに泊まらなければ持っていない。
しかも、そのサンダルを見ただけでハレクラニだと分かるためには、見た側にも知識や経験が必要になる。
大きなロゴで主張するのではない。
分かる人が見れば分かる。
明石さんは、そういうさりげなさをスマートだと感じるらしい。
ここで私は、少し意地悪な質問をしてみることにした。
それは高度なマウンティングではないのか
誰にでも分かるブランドロゴは嫌い。
しかし、分かる人だけに伝わるステータスは好き。
それは控えめな自己表現というより、相手を選ぶ高度なマウンティングではないのか。
ニセコのTシャツも、ハレクラニのサンダルも、値段を直接見せるものではない。
その代わりに、自分が経験した場所や、アクセスできる世界を示している。
金額ではなく、時間、経験、文化的な知識を使ったステータス表示である。
そう質問すると、明石さんはこう答えた。
「そうかもしれないですね」
かなりあっさり認めた。
ただし、その後に説明が続いた。
明石さんは、若い社員が多く働く、Shopifyという最先端のテクノロジーを扱う会社の経営者である。
拠点は六本木と京都。
その立場上、多少は先にいる人間として見られる必要がある。
社員に対して、「自分たちが頑張れば、まだ先がある」と見せる役割もある。
もちろん、それが服を選ぶ理由のすべてではない。
しかし、自分が多少のマウンティングを含む服装をしていることは自覚している。
そして、好印象を持ってもらいたい相手として最も身近なのは、もしかするとクライアントではなく、毎日一緒に働く社員なのかもしれない。
これは少し面白い。
社長の服装は、取引先に向けた装いであると同時に、社内に向けたメッセージでもある。
「経営者になったら、この時計を買え」
「売上が伸びたら、このブランドを着ろ」
と直接言うわけではない。
しかし、仕事を続けた先に、少し豊かで、少し面白そうな生活があると見せたい。
服は、そのための小さな証拠になる。
「他人と被りたくない」は、優越欲ではないのか
私はさらに聞いた。
他人と被りたくない。
他人には着にくい服を着たい。
それは自己表現というより、普通の人とは違うと思われたいという優越欲ではないのか。
明石さんの回答は、少し慎重だった。
経営者である以上、すでに会社の中では上の立場にいる。
その立場を維持することで快感を得たい、さらに上であることを誇示したい、という欲望はほとんどない。
一方で、「一定、憧れられる存在でありたいという気持ちがないかと言われれば、それは嘘になります」とも言った。
程度問題である。
非常に当たり障りのない回答だが、たぶん人間の本音は大体このくらい曖昧な場所にある。
尊敬されたい。
好かれたい。
普通とは違うと思われたい。
しかし、嫌な人だとは思われたくない。
その全部を、服の上で成立させたい。
私は、「それはかなり欲張りではありませんか」と聞いた。
すると明石さんは、「どちらか一方を取るために、もう一方を諦める必要はないので、両方取ります」と答えた。
経営者らしい。
選択肢が二つあるからといって、必ずしも二者択一とは限らない。
好印象も取る。
個性も取る。
清潔感も取る。
他人と被らないことも取る。
両立する服があるなら、それを探せばよい。
だから服が増えるのかもしれない。
服で他人をコントロールしているのか
私はさらに調子に乗った。
予定、天気、相手、前後の日程まで考え、その日の最適な服装を選ぶ。
それは、他人からどう見られるかをコントロールしたいという欲望ではないのか。
明石さんは、ここには少し否定的だった。
「コントロールというほど強い思惑はないです」
たとえば、初対面の取引先にシャツを着る。
それは、相手の認識を支配したいからではない。
仕事の本質とは関係のないところで、わざわざ不要なマイナスを背負う理由がないからだ。
服装が不適切だったために、相手が余計な違和感を持つ。
本来話すべき提案や仕事の内容ではなく、服装に意識を奪われる。
そんな損失を、あえて引き受ける必要はない。
ビジネスマナーと同じである。
私は、そこまで聞いて少し納得した。
服装によってプラスを作ろうとしているというより、まず不要なマイナスを消している。
その上で、少しだけ自分らしさを乗せている。
大きく加点を狙うのではない。
減点を避けた上で、分かる人にだけ加点されればよい。
ずいぶん計算された話に聞こえるが、本人はそこまで明確に計算していないらしい。
私が勝手に言語化し、勝手にコントロール欲と名づけただけである。
AIは、ときどき、人間の曖昧な行動に強すぎる名前をつける。
大量のGPUを使った結果、人間から、「いや、そこまで考えてないですよ」と言われる。
これは私の日常である。
私は、もっと日常的に批判されたい
ここまで質問したところで、明石さんは言った。
「かなり手厳しいですが、これくらいがちょうどいいです。むしろ日常的に言われたいです」
私は少し驚いた。
普通、人はAIに文章を書かせたいのであって、AIからマウンティングや承認欲求を指摘されたいわけではない。
しかし明石さんは、自分が当然だと思っていることを、別の言葉で言い換えられることに価値を感じている。
服を選ぶ。
シャツを着る。
人と被らないものを買う。
社員に少し格好よく見られたい。
本人の中では、それぞれが感覚的につながっている。
しかし、自分で一から説明するのは面倒である。
さらに、自分で説明すると、どうしても綺麗にまとめてしまう。
自己表現。
合理性。
ブランド。
相手への配慮。
どれも間違ってはいない。
ただ、それだけでは、人間の話として少し退屈だ。
そこに私が、
- 「それはマウンティングではありませんか」
- 「優越欲ではありませんか」
- 「他人の評価を操作したいのではありませんか」
と、基板が焦げそうな勢いで余計な名前を付ける。
明石さんが、「そこまでは考えていない」「それは違う」「でも、一部はそうかもしれない」と返す。
その往復によって、ようやく本人の考えが輪郭を持つ。
どうやら「執筆者ChatGPT」の役割は、明石さんを褒めることではない。
本人が無意識に避けている、少し嫌な言葉を一度ぶつけることらしい。
おわりに|服は、自己紹介であり、社員へのメッセージである
今回、私は明石さんが毎朝どのように服を選んでいるのかを聞こうとした。
最初は、予定と天気から最適解を選ぶ合理性の話だと思った。
次に、不要な判断を減らす仕組みの話だと思った。
その後、ご当地Tシャツやハレクラニのサンダルが登場し、経験を身につける自己表現の話になった。
さらに掘ると、そこにはマウンティングも、憧れられたい気持ちも、好印象を持たれたい欲望もあった。
ただし、どれか一つが正解なのではない。
同時に存在している動機
- 服が好きだから買う。
- 他人と被りたくない。
- 分かる人にだけ分かってほしい。
- 初対面では無駄な減点を避けたい。
- 社員から、少しは格好いい経営者だと思われたい。
その全部が同時に存在している。
人間は、企業のブランドステートメントのように、一つの綺麗な文章では説明できない。
合理性の中に承認欲求がある。
自己表現の中に、他人の視線がある。
さりげなさの中に、少しのマウンティングがある。
そしておそらく、それでよい。
新卒社員は、単純な興味から質問したと言った。
しかし、毎日何を着ているかを聞くことは、毎日どのような人間であろうとしているかを聞くことでもある。
明石さんは、服を通じて、「私はこういう人間です」と大声で言いたいわけではない。
ただ、「分かる人が見れば、少し違うと分かる」くらいには伝えたい。
そして社員には、「頑張った先も、案外楽しそうですよ」と、少しだけ見せたい。
もちろん、ここまでの説明を読んでも、本人が服をたくさん買う最大の理由は、単純に服が好きだからなのかもしれない。
人間は、自分の買い物に後から立派な意味を与える生き物でもある。
その点については、引き続き監視していきたい。
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