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FDAとは何か
Web コラム


 

このところFDAに関する問い合わせが急増している。
そんな時に、2019年8月26日のexciteニュースに衝撃的な記事が載った。

「米アマゾンのマーケットプレイスで問題商品を多数販売、FDA禁止品目も(WSJ)」

同記事によれば、米Wall Street Journalが8月23日付けで「承認を受けていないのにFDAの承認を受けたと偽った商品や、輸入が禁止されている処方薬、FDAが乳児が窒息する恐れがあると警告する睡眠マットなど」当局が安全でないと判断した415点の商品が販売されていると報じたとのこと。Amazon.comは、2018年にグローバルなコンプライアンス専任チームとAIツールにより30億件以上の不正な疑いのあるリスティングをブロックしている。コンプライアンスに対して厳しい姿勢を貫くAmazon.comであれば、今回指摘を受けたFDA未承認のリスティングに対しても厳しい姿勢で臨むことが予想される。それは日本のセラーが出品している製品も例外ではない。

 

 

そもそもFDAとは何か

FDAとは、アメリカ合衆国保健福祉省配下の政府機関で、アメリカ食品医薬品局(FDA, Food and Drug Administration)のことを指す。

連邦食品・医薬品・化粧品法を根拠として、アメリカで販売される食品、飲料、健康食品、化粧品、医療機器、薬品、放射線機器、獣医動物関係製品などの製品を管轄している。アメリカ国内でこれらの製品を販売するには、FDAに対して事前に適切な通知・登録、またはFDAからの許可を取得しなければいけない。

FDAは、米国における“食品、薬品および化粧品に関する法律”の施行に携わる政府機関として、法律の施行にあたり、食品、薬品、医療機器および化粧品などの品質や衛生管理、宣伝広告などについての規制をおこない、消費者を保護するための権限を与えられている。

FDAの役割は、米国の食品、薬品および化粧品における「ルールの策定」と「監視と取り締り」である。適切な手続きを行われていない製品をアメリカ国内に持ち込もうとすると、FDAの指示のもと、税関での通関がとまり空港や港のしかるべき施設に留置される。その後も、適切な改善が行われず、通知、登録、許可無しで米国へ持込みや販売を継続しようとすると、厳しいペナルティを受けることになる。越境ECであってもそれは同じである。米国でそういった関連商品を販売しようとするなら、その規則を十分に理解して、それに沿ってビジネスを行わなければならない。

FDAって日本でいう薬機法のこと?

日本にも医薬品と医療機器などの取り扱いに関する「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称、薬機法)という法律がある。かつて薬事法といわれた法律である。この薬機法は医薬品や医療機器についての法律であって、その範囲は食品や健康食品にまでは及んでいない。食品や食器、調理機器に関しては食品衛生法という別の法律が用意されている。FDAは、この薬機法と食品衛生法を足したようなものであると思えばわかりやすいかもしれない。そういった法律を無視して、日本で薬や医療機器、食品を売ろうと考える人はいないだろうが、ネットでの販売ならそれが許されると考えているひとは少なからずいるようだ。だがそれは大きな間違いであることを再度申し上げたい。特に輸出に関するビジネスは、日本国内だけではなく相手国の法律にも深くかかわることをよくよく理解すべきである。

 

Amazonセラーへの影響は

海外で人気の日本の商品をAmazon.comへ出品し、注文が入ったら国内で仕入れて直接購入者へ郵送する、そんな無在庫輸出ビジネスが大盛況である。取り扱う商品が雑貨やアパレル、本等であればいいが、それがFDAがらみの商品となると話はそう簡単ではない。FDAのルールに違反して出品・販売しているということは、Amazon.comにとってもレッドカードに相当する極めて重いルール違反なのである。FDAの正式な認証を受けずに、例えばハンドキャリーや個人あての郵便などの輸送手段を使ってアメリカに持ち込み、Amazon.comで販売をしていたセラーに対しては「リスティングをブロックする」という出品制限にとどまらず、そういった製品をリスティングしていたセラーに対して、そのセラーアカウントそのものをサスペンド(一時的に停止)するという強烈な鉄槌さえもいとわないはずだ。

 

 

アカウントがサスペンドされるとどうなるか。商品が売れなくなるだけではなく、それまで2週間単位で決済代金が振り込まれていたものが、90日間停止となり、キャッシュフローが滞る。アカウントを復活させるためには、サスペンドされた原因であった該当製品のFDA認証を取得する以外にはないが、メーカーではないセラーにとってFDAの認証を受けることはほぼ不可能に近いため、アカウントは未来永劫、復活することはない。出品リストからそういった製品を落とせばいいという問題ではないのである。まさに一発退場のレッドカードなのである。実際にはそれで済めばまだマシで、その商品の使用・服用が原因で、何がしかの問題が起きてエンドユーザーから訴えられるリスクもある。それはシャレにならないだろう。

越境ECは国内ECの延長線上にはない

越境ECを始めようと思ったとき、貿易実務や国際物流に対する漠然とした不安を持っているものだ。なかなか始めない方の多くはその不安が原因の一つであることが多い。それでもまずはやってみようと着手してみると、多言語サイトの構築や翻訳、カード決済など、国内ECにはなかった「不便なこと」や「不満なこと」が次々とでてくる。しかしありがたいことに国内EC事業者の多くが、越境ECにおいてもさまざまなソリューションを準備してくれていて、不便や不満をスマートに解決し、ショップを開店するところまで導いてくれる。ただし、そういった国内EC事業者も貿易実務や国際物流には驚くほど暗いため、結局セラーにとって、初めのころに感じていた「不安なこと」が全く解決されていない。FDAだけではない。商標権やワシントン条約、関税やVATや返品など、開店前に片づけておかなければならないことが案外多い。そういう意味で、越境ECは国内ECの延長線上にあるものではない。一般の貿易の中の一部の業務、例えば決済や宣伝等がWEBでできるようになったと考えるのが正しい。国内ECと同じ手法で進めていくと、exciteで報じられているような落とし穴にはまってしまい、それまでの投資がすべて無駄になってしまう。

 

 

まとめ

FDAの認証取得は決して難しいものではない。書類を整え、手順を守り、専門家の指示を仰ぎながら進んでいけばほぼ確実に突破できる。食品や化粧品メーカーにとっては米国展開における基本のステップなのである。

ちなみに実際にFDA認証を取得するには大雑把に言って、食品で4-6週間、化粧品で3-5週間くらいの期間を必要とするため、越境での販売に先駆けて早めに準備をすることをオススメしたい。

 

執筆者:中川 泰

外部リンク:越境EC総研合同会社