最近、かなりピザにハマっている。
食べ歩くだけでは飽き足らず、自宅用のピザ窯を買い、生地を自動でこねる機械まで導入して、毎週のようにピザを作っている。加水率や発酵時間を変えてみたり、トマトソースを作ってみたり、素人なりに色々と試している。
そんなこともあって、以前よりピザ屋の店内をよく見るようになった。
すると、私がよく行く都内のピザ屋には、なぜか外国人客が多いことに気づいた。
観光客向けの店でもなければ、外国人向けのサービスが充実している店でもない。来ている人たちを見ても、インバウンドというより、近所に住んでいるか働いている人が多そうで、明らかに常連らしい人もいる。
なぜ外国人は、こんなにピザ屋へ通うのだろうとふと疑問に思った。
私はボストンで、日本食屋にそれほど行かなかった
私は以前、ボストンに4年間住んでいた。
ただ、日本食店へ頻繁に通っていたかというと、そんなことはない。コスパの問題もあったし、うどん、そば、ラーメンなどは別に寮の部屋でも作れるという事情もあったが、普段の外食はピザやハンバーガーなど、現地で普通に食べられているものを食べていた。
なので、日本で暮らしている外国人がピザ屋の常連になっていることを、最初は少し不思議に思った。
ただ、よく考えると、日本食とピザを同じように考えること自体がおかしい。
日本食は日本人にとって母国料理だが、ピザはアメリカ人だけでなく、イギリス人、フランス人、ブラジル人など、かなり多くの国の人にとって普段の食生活に入っている。
海外生活では、母国料理そのものではなく、それまで普通に食べていた食生活が求められるのかもしれない。
ピザは実際、世界でどれくらい食べられているのか
気になって少し調べてみた。
YouGovが24カ国、2万5,000人以上を対象に行った調査では、イタリア料理の好感度は平均84%で世界1位。中華料理が78%、日本料理が71%と続いている。
イタリア料理にはパスタも含まれるので、これだけでピザが世界一だとは言えない。ただ、ピザとパスタが世界で最も広く受け入れられている料理であることは間違いなさそうだ。
市場規模の推計にはかなり幅があるが、世界のピザ市場は2025年時点でおよそ1,600億ドルから2,000億ドルを超える規模とされている。同じ調査会社の推計ではサンドイッチ市場が約1,650億ドルなので、ピザはほぼ一つの料理だけで、それと同等かそれ以上の市場を作っている。
さらに、Domino’sは世界90以上の市場に2万1,700店超、Pizza Hutは108の国と地域に1万9,000店超、Papa Johnsも約50カ国に約6,000店ある。大手3ブランドだけで、世界に約4万7,000店以上ある計算になる。
ある程度肌感覚で分かってはいたが、思っていた以上にピザは世界中の人が普通に食べている。
国ごとに全然違うのに、全部ピザである
ナポリ、ローマ、ニューヨーク、シカゴ、デトロイト、日本の宅配ピザ。
生地の厚さも具材も食べ方もかなり違う。それでも、全部ピザと呼ばれている。
カレーは日本に入って、ほぼ日本食になった。ラーメンや餃子も、毎回「中国由来の料理を食べている」と考えながら食べる人はいないだろう。
一方、ピザは各国の日常食になっても、ピザという名前と基本的な形を残している。
だから世界中の人が、自分の国ではどんなピザを食べるのか、薄い生地と厚い生地のどちらが好きか、どこの店がうまかったか、パイナップルを乗せるのはありなのか、といった話ができる。
同じ料理について話しているのに、それぞれ違う経験を持っている。
ここがピザの面白いところなのだと思う。
寿司屋より、ピザ屋の方がお互いの話をしやすい
外国人の友人と寿司屋へ行くと、日本人である私が説明する側になりやすい。
この魚は何なのか、どうやって食べるのか、日本ではどういう店なのか。こちらが話し、相手が質問する。それはそれで面白いが、少し役割が分かれる。
ピザの場合は違う。
相手にも自分の国で食べてきたピザがあり、こちらにも日本で食べてきたピザがある。
- 「ボストンではこうだった」
- 「日本の宅配ピザは具を乗せすぎではないか」
- 「結局マルゲリータが一番美味しい」
- 「自分の国独自のピザの具はあるのか」
そんな話を、お互いの経験を持ち寄ってできる。
寿司屋とピザ屋の会話の違い
- 寿司屋では、日本人の私が説明し、相手が質問する。役割が分かれる。
- ピザ屋では、お互いが自分の国で食べてきたピザの経験を持ち寄れる。
サッカーや映画、音楽などと同じで、ピザも国籍を越えて話せる共通テーマの一つなのかもしれない。
珍しい料理より、ど真ん中にうまいピザ
以前、宝石について色々と調べていた時期がある。
そのとき、ルビーの格付けで知られる著名な方が、最高品質のルビーは最高のカツ丼や蕎麦のようなものだと話していた。
珍しいというだけではなく、誰が見ても良いと思う、ど真ん中の品質には強さがあるという話だった。
ピザも少し似ている気がする。
国によって好みは違うし、変わった具材のピザもある。それでも、生地の焼き上がり、トマト、チーズ、塩気のバランスが本当に良いピザを食べると、出身国に関係なく「これはうまい」となる。
世界中で食べられているからこそ、多くの人がピザについて自分なりの基準を持っている。そして本当にうまいピザには、その違いを越えて評価される、ど真ん中の品質がある。
だから、外国人向けでも観光客向けでもない町のピザ屋に、外国人の常連が集まるのだろう。
海外で暮らしていると、英語が話せることだけでなく、相手と共有できる話題を持っていることが結構大事だった。
相手の文化について質問するだけではなく、自分も経験や好みを持った状態で話せるものがあると、会話はかなり楽になる。
サッカーでも、映画でも、音楽でもいい。
最近の私の場合、それがたまたまピザだった。
なぜピザ屋には外国人が多いのか。
おそらく、ピザが外国人の食べ物だからではない。
世界中の人が、自分の食べ物として話せる料理だからなのだと思う。
この記事を書いていて、今度、日本在住の外国人とご飯に行く機会があったら、ピザ屋に行こうと思った。
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