先日、「故障しても許されるフェラーリ」という趣旨の記事タイトルを見かけた。
本文は会員限定だったので読んでいない。ただ、そのタイトルを見て、「信用は築くのに10年、失うのは一瞬」という有名な言葉を思い出した。
確かに、ブランドが信用を築くには長い時間がかかる。
品質を守る。期待を裏切らない。問い合わせにきちんと対応する。約束した日に商品を届ける。そうした小さな積み重ねによって、少しずつ信用はつくられていく。
一方で、大きな不祥事や失敗によって、それまで築いてきた信用を一気に失う企業もある。
ただ、本当に10年かけて築いた信用は、一度の失敗だけで一瞬にしてなくなるものなのだろうか。
むしろ、簡単になくなってしまうのであれば、それまで積み上げてきたものは、本当に信用だったのかとも思う。
故障しても許されるブランド
もちろん、「フェラーリなら壊れてもいい」という単純な話ではない。
しかし、フェラーリを買う人が求めている価値は、「絶対に故障しないこと」だけではないはずだ。
デザイン、走行性能、歴史、希少性、所有することそのものの体験。
そうした価値が長い時間をかけて積み上がっているからこそ、一つの欠点やトラブルがあったとしても、それだけですべての評価が覆るとは限らない。
これは、ブランドが長年築いてきた信用が機能している状態とも言える。
強いブランドとは、失敗しないブランドではないのかもしれない。
失敗したときにも、それまで積み上げてきたものが顧客の判断に残るブランドなのだと思う。
信用が一瞬で消えるとき
では、なぜ一つの出来事によって信用を大きく失うブランドもあるのか。
違いは、その出来事によって「過去の見え方」まで変わってしまうかどうかにあるのではないかと思う。
たとえば、長年品質を大切にしてきた企業が、一度製品トラブルを起こした。
それだけであれば、「こういうこともある。今後どう対応するのか見よう」と考える顧客もいるだろう。
しかし、そのトラブルを長期間隠していたことが分かったとしたら、意味は変わってくる。
これまで「品質を大切にしている会社だ」と思っていた過去の行動まで、別のものに見え始める。
信用が一瞬でなくなったように見えるとき、実際には一つの失敗が10年分の信用を消しているのではない。
その出来事によって、過去10年の解釈そのものが書き換わっている。
そう考えた方が近いのかもしれない。
信用が残るとき、消えるとき
- 一つの失敗があっても、それまで積み上げてきたものが顧客の判断に残るなら、信用は機能している。
- その出来事によって過去の行動の見え方まで変わってしまうと、10年分の解釈がまとめて書き換わる。
人も同じだ
ここまで考えて、これは人間関係でも似ているなと思った。
長く付き合っている人が一度失敗したからといって、それまで見てきたものをすべて否定することはあまりない。
人間なので、間違えることもあれば、普段とは違う一面が出ることもある。
その一つの出来事だけで判断するのではなく、それまでどういう行動をしてきた人なのか、そして失敗したあとにどう振る舞うのかを見る。
一方で、一つの出来事によって「今まで見ていたこの人は何だったのだろう」と思えば、過去の記憶まで違って見える。
ブランドと人との間に築かれる信用も、案外似た構造なのだと思う。
おわりに|失敗したときに試される
ブランドを運営する側からすると、失敗しないことを目指すのは当然である。
しかし、どれだけ慎重に運営していても、長い時間の中で一度も問題を起こさない企業はほとんどない。
だからこそ、普段から積み上げている信用に意味がある。
何も起きていないときには見えにくいが、何かが起きたときに、
「この会社なら、きちんと対応するだろう」
「今回は残念だったけれど、これまでの経験まで否定する必要はない」
と思ってもらえる。
それもまた、ブランドが長い時間をかけて築いてきた資産なのだと思う。
そして、当社もこの9月から10期目に入った。
ちょうど「10年」という時間を少し意識する節目でもあったので、このテーマについて書いてみようと思った。
これまで一つひとつ積み上げてきた仕事や関係が、何かあったときにも簡単には消えないものになっているとしたら、それは会社としてとても大きな財産だと思う。
10年の信用は、一瞬では消えない。
今後も積み上げていきたいと思った次第であります。
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